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2013年9月29日 (日)

留学と文系、理系

先日、文系と理系について書きました。その時にも書いた様に、あまりそういう区分は僕は個人的には好きではありませんが、まあ単純だしよく日本ではそういう区分をされるのでとりあえず今回もその続きの話を書きます。先日ずいぶんと長い間、疎遠になっていた幼なじみとFacebookのメッセージでやり取りをしていたら僕が具体的に何をしているのか?という話になりました。そういえばしばらく前に彼女には「アメリカの大学の職員」とは教えたけどどの教科で具体的に何をしているのかまでは書きませんでした。まあ別に秘密でも何でもないので化学が専門で(たまに授業を)教えて研究は環境系の化学分析と大きな物理実験の制御をしている、という様な事を書いて送ったところ、返信に「留学したからてっきり言語学か経済学か文系だと思った」と戻ってきました。それを読んで元々、前からそのうち書こう、と思っていたのがこの内容の話(実はこの前書いた文系と理系の話はこの話を書く為の長い前置き)。

僕が元々、この留学と文系と理系の話を考えたのはずいぶん前の話で二年ぐらい前にさかのぼります。ちょうどその頃、日本人の学生の子からブログを通じてメッセージがあって結局、その後、実際に本人に会って話をする事がありました。その時、話をしていて僕が思ったのは「自分は理系の教育を受けてよかった」という事。どういう事か説明をしましょう。その日本人の学生の子、アメリカの高校を出てそれからうちの大学に入ってきたとの事。そう考えると英語で生活している年数や生活し始めた年齢を考えるとおそらく僕が大学一年生だった頃よりも英語の能力が高いものと思われます。それでもやはり小さな頃から話をしているわけではないのでアメリカ人にはまあかなわないだろう、と思われます。その反面、アメリカの高校に行っていたという事は数学や化学などの知識は僕が大学一年生だった頃よりも低いと思われます。そう考えると彼女はおそらく僕が学生の時に持っていたアメリカ人の学生と比較した利点がほぼない可能性がある、という事です。実際、その時取っていた一般化学の授業ではかなり苦労していたらしいです(もう少し早く僕の所に来てくれればいくらでも助けてあげる事ができたのに、と今でもこれは少し残念に思っています)。その後でそこから思ったのが「自分は理系の教育を受けてよかった」という事なのです。

別にこれはその日本人の学生の子の事を考えて思った事でもなく、全般にそう思ったのでもあります。個人的には理系の教育を受けていたので学生の頃、数学はあまり勉強せずにすんだ教科がいくつもありました。一年生の時に取った大学代数は全くしなくても大丈夫でした(ちなみにそのクラスは後に取らなくてもよかった事が判明…)。唯一したのが宿題。でもこれは内容が中学生の代数程度なのでものの十五分もあれば全部終わる様な内容の宿題のみ。試験は全く勉強せずにすんだので楽なものでした。次に取った微積分Iも高校で習った範囲のみでほぼ全部が微分だけで積分は簡単な積分に少し触れたのみでした。その後に取った微積分IIは数列が主になっていて少し難しかったですがそれでもまあなんとかしました。こちらは若干、高校で習わなかった内容がありました(一番の問題はどうして数列が重要なのか全く理解できませんでしたがそれはただ単に教え方が悪かったからと思われます。後にこちらは物理学の数理物理学を取った時に数値解析を学んでようやく数列の重要性を理解しました)。微積分IIIにまでなるとさすがに数学専攻の学生と物好きしか普通は取らないので(僕は物好き)学生の数もうんと減ってしまい十人程度しかいませんでした(微積分Iは百人程度、微積分IIは四十人程いました)。微積分IIIは今度は高校で学んだ内容なので今度は簡単…。こちらはほとんど高校で習った積分のみでした(微分方程式が少しあったか、そう言えば)。

この様に日本の高校で理系の授業を取っていると数学は楽。数学程ではありませんが化学や物理学もやはり似た様な所があり、一般化学はだいたい三分の一から半分ぐらい、一般物理学でも四分の一から三分の一程度が高校で習った範囲の事ばかり。そうなるとある程度は手を抜く事ができます。その上、数学、化学、物理学などの本は専門用語を多く使ってはいるものの英語の文章は簡単な表現しか使われていない、という利点もあります。

ところが英文学の授業や社会学、歴史などではそうもいきません。そもそも書いてある文章が特に英文学だと簡単ではない上に読まなければならないページの量も半端ではありません。その上で授業はディスカッションが主体。そうなると今度は読むだけではなく聴いて話す事もできなければなりません。またレポートも多くなり、書く事もできなければなりません。そうなると外国人にはきつくなります。先ほどの日本人の子の様にアメリカの高校で学んで、のパターンだと数学や理科の利点がない上に英語の方も、となるとたいへんだな、と思われます…。先日、幼なじみに文系だと思っていた、と返信が来た時にまあ概ねこの様な事を返事に書いておきました。おそらくこの図式は商学部にいってもあまり変化がなく、商学部などではもっとディスカッションの量が増えるので(日本人には)もっとある意味、たいへんなのではないか?と思われます。

それでも僕が大学生だった頃はまだ右も左も上も下もわからないくせに生意気だった上に背伸びをしていたので英語が話せた僕は上の日本人の人たちの一部を心の中で見下していたところが少しありました。当時のうちの大学の日本人の人たちの多くは商学部の学生。従ってディスカッションが重要だしまた実際に働き始めたら英会話ができて当たり前のはずの人たちにもかかわらず英語が僕よりも下手だ、と思ったからです。それが本当の事かどうかはともかくとしてそう思っていた事は事実です。化学、物理、数学などの授業ではあまり大した英語でなくてもなんとななるのに僕の方が彼らよりも英語がうまいとはどういう事?と内心では思っていたのです。でも実際の所、だからと言って当時の僕が英文学の授業や社会科学の授業が楽だったかというとそういう事は全くなくてできるだけ負担が少ないような時に(要するに夏の授業)を取りました。それまでの英語力しかなかった、と言うのが事実なのです…。

別にどちらがいいか?という事ではないとは思うのですが日本で高校まで教育を受けているとしたらアメリカの大学に来て文系を専攻すると必ずしも楽ではないよ、という事だと思うのです。ただ、これにも若干の差があります。うちの大学はまあリベラル・アーツ・カレッジなので正直、取らなければならない授業の範囲や種類は多いです。ところが州立大学ではそれほど事細かに決められていなくてある程度はある種類の授業は逃げる事ができる、という事はある様です。また若干はそういう所もうちの大学でもあって例えば社会科学でもある特定の授業の方が簡単らしい、という話はよく学生から今でも聞きます(僕が学生の頃は社会学や地理学が簡単、という話でした。実際、社会学はそれほど難しくはありませんでした)。それでも哲学や神学や歴史学は必ず取らなければならないので逃げられない、という事はある様です。もっともこれもどの先生の授業がいいか、という事もあるらしくそれによる差があるらしいです。

最終的には留学をするとしたら何をしたいのか?どうして留学したいのか?という事が重要、という事に繋がる事なのではないか?と思います。ただ、一つだけはっきりしている事はあります。僕は言語学を勉強する事は悪い事だとは思いませんが日本の一部のいわゆる「外語大学」や「外語学部」はどうか?と思います。そういう所の一部は要するに例えば「英語を勉強する学部」であったりするわけです。そうなると留学してどういう物よ?という気がしてならないのですね。これが英文学とかになると話はまた別なのですがそもそも、その様な外語学部にあたる様なそういう概念が少なくともアメリカの大学の多くには存在しない事がよくあります。確かに最近の外語学部ではかなり言語学に近い取り組みを行っている所もあるようですが、言語を学ぶ、という事を重視している所はどんな物よ?という気がしないでもありません。実際、学生の時にある夏にインターナショナル・プログラムでバイトをしていた時に夏の短期留学で来ていた学生の子にESLの先生が「長期で留学したいのだったら日本のいわゆる『英語学部』はないので専攻が『英文学』になるから難しくなるわよ」と説明をしていました。もちろん生きた英語を勉強する、という観点からは意義がある事でしょうがでも他の専攻でもそれが(理論的には)できるという事も考えなければならないのではないか?と思えてなりません。個人的には理系の留学と言うのは決して悪い事ではないな、と思います。

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コメント

たまたまサイトを見つけました。初めまして。文系と理系の指摘大変面白かったです。自分も英文学科の大学に在籍し、アメリカに留学しました。留学した時、日本の英文科とのずれを大変実感しました。確かにご指摘のように、日本の外国語学部は言葉を学ぶ要素が大きいです。近年はTOEICやTOEFLなど就職を重視したカリキュラムになっており、なぜ英語を勉強するのかその先がないような感じだと私は思っています。で、議論を戻しますが、留学にいって、結局英語は道具でしかないんだということに気づいて、そのまま今の年齢に至りました。日本の教育の欠点というか不利な点は、一度軌道に乗ったら、変えることが難しいということだと思います。理系文系の区分けもそうですが、大学に入ったらすでに専攻が決まっている。18歳という年齢ですでにやりたいことがはっきりしているのだとうかという疑問もあります。私自身もなんとなく英語が得意だからということで外国語学部に入りましたが、そうじゃないんだなということにあとで気づきました。英語を勉強したところで、もちろん有利な点はありますが、ネイティブには当然なれません。やはりそれ+1の武器を持つことが重要なんだなと思いました。理系で英語ができるそれは大変うらやましいことだなと改めて思いました。ありがとうございました。

おおもりさん、
コメントありがとうございます。

その通りだと思います。日本の現在のシステムの問題の一つはかなり早い時期に自分がしたい事を限定されてしまう、という事にあるかと思います。僕の行った高校は進学校でしたがトップクラスではなかったので基本的には文系、理系の区別しかありませんでしたがもう少し上の高校では国立文系、私立文系、国立理系、私立理系と四つに分けられてしまっていて18よりも早くに選択の幅が狭まっている感じがします。ただ、そうは言っても理系から私立文系は不可能な話ではないらしく同級生で理系から私立文系に入っていた子もいました。もっとも文系から理系は多分、無理なのだろうな、という気がします。

外国語って基本的には道具だと僕も思います。結局使ってなんぼの物なのだと思うのですね。僕の偏見かもしれませんが「英語が好きだから」という理由だけで外語学部に行くのはもったいない話に思えてなりません。その先の「英語を使って何をできるのか?」まで考えなければならないと思うのです。ところがそれを高校生が受験の時にできるのか?と思えてなりません。

また外国語は道具という観点から考えて僕がよく見かけるのはCERNやBNLで見かける日本人の学生達。当然、物理学の学生達なのですがほぼ間違いなく全員「もっと英語を勉強しておけばよかった」と言っていました。理系の学生なので英語をそれほど考えずに来た、という事がある様です。

一概にはいえませんし、複合的な要因がありますが、日本は英語が道具だと気づきにくい状況も大きいかと思います。自分は英語を高校で教えていますが、生徒がなぜ英語が必要なのかを理解するのはやはり難しいと思います。(もちろん、そこをどうにかするのが教員の役割でもありますが。。)生徒がなぜ英語が必要か理解できなま大学等に進学し、大学ではどうして必要かわからないまま、TOEICなどの資格に重点が置かれる状況でもあります。またいまだに日本では受験が最終目的地だという考えも強いと思います。受験に必要か不必要かで科目を取捨選択し、逆に将来、自分の選択肢を狭めてしまうことも多いです。私が教えている生徒の中には、理系だから英語ができないと決め込んでしまう生徒もいます。日本の教育は、枠や型に押し込んでしまう教育ともいえるかもしれません。

なるほど、確かに日本で高校生をしていると英語が道具だという事に気がつきにくいかもしれませんね。僕が高校生の頃は道具として有効な教え方は明らかにされていませんでした。数年前、故郷の金沢の高専で英語を教えている、というアメリカ人の方と話をしていた時にもやはり「どうやって生徒たちに英語が重要かを教えるのに頭を悩ませている」と言っていました。彼女は僕の様な人間がいる、という事にある程度の感銘を受けていた様です(がその後どうした事やら情報はありません)。

理系でも大学である程度、研究などをすれば割とすぐに英語が必要になってきたりする様で、例えば金沢工業大学の友人の先生はよく学生を連れてタイやベトナムの国際学会に行っています。そうやって無理矢理にでも英語に触れさせる、という事をさせている様です。

ただ、英語は本当に必要になるとみんな頑張ってでも何とかしている、という側面もある様で、例えば先ほどの金沢工業大学の先生も「ピジン英語だ」とか言いながら何とかしていますし、(兄の)幼なじみのSさんも中学、高校の頃に英語が得意ではなかったそうですがイギリスに二年程駐留したりアメリカに出張に来たりと何とかしている様です。

個人的には現代日本で一般的な教育の意味と価値が少しおかしい様な気がしてなりません。多くの人たちに取って学校教育とは大学に到達する事と捉えられている様だ、と思えてなりません。ではなぜ大学か?と訊けばその答えがよく「いい職につくため」。それは決して間違った事ではないのかもしれませんが学問という考え方からは決して正しい事とは言いがたいのが残念に思えてなりません(まあだからと言って一般のアメリカ人の教育への見方が正しいとは到底僕には思えませんけど…)。

現代日本の様に教育=学校=受験という構図、もしくは教育=実利という考え方から抜け出せなければならないのだと思います。そういう大きな意味での本来の教育改革という物を考えていかなければならないのだろうな、という気はします。

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