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2014年2月19日 (水)

超音波と炊飯

事の発端は先日、解凍をした刺身から始まりました。例のアラスカの魚業者さんからの刺身を解凍して食べて残りをどうしようか?となった時にふと昆布〆にしてみる事にしました。金沢で生まれ育った僕にとって昆布〆は子供の頃から慣れ親しんでいる食べ物なのです。思えばその昔、まだ学生だった頃に母がアメリカに帰るのに昆布〆を保冷剤と持たせてくれたぐらい(当然、オマハに戻って友人とすぐに食べましたけど)。多分、今はそういう事をしたらきっとしかられるけど昔は機内持ち込みが緩かったからできた事ですね。

さて、そう考えながら昆布〆をしていてふと思ったのがいったいどういう原理で生魚が日持ちするのか?という事。ところが探してみてもそういう事を書いてある文献がどこにもありません。当然ながら日本以外のところで昆布〆を作る所はないので(古くは日本でもそういう所は北陸以外はあまり無いぐらいですから)英語の文献は全くありません。そこでまずは友人の植物学者に話をしに行って来ました。

植物学者の友人に昆布〆が何であるかを説明したら「よく知らないけど…」と言いつつも本を探してみてくれたら「ポリフェノールをはじめとした抗酸化物質が昆布にあるらしいからそのせいかも…」との事。更に僕もしばらく文献をしらべたらそれ以外にも昆布には硫酸基が多く含まれていてそれが抗菌材となっているらしい事が判明。まあそれなりに納得できる説明なのでそれはそれでおしまい、としました。

その時に昆布に関する文献を探している過程でこういう論文に遭遇しました。昆布だしの抽出に関する論文ですがなんと普通にお湯で抽出するだけではなく、超音波も使って抽出するとよりよいだしが取れてしかも省エネルギーで時間も短縮できるとの事。それから超音波付きのIHとか開発されているのかな?と思って調べたら実際にそういう炊飯器がある事が判明。この超音波付きのIH炊飯器は別に今に始まった事ではなくて僕がただ知らなかっただけですがなるほど、説明を読んだら納得はいきます。要するにお米の吸水時間を超音波振動させて短縮させている様です。

この論文を読んでふと思ったのが「これなら自分でもできるかも」という事。実は実験室には古い超音波洗浄機があるのです。僕は炊飯器を持っていなくて鍋でご飯を炊いていますが鍋で炊くという事であんまり前々から準備ができません。従ってご飯を夕食に食べる時はまず帰って来てからすぐにお米を水に浸しておいてそれから他の事をしてようやくご飯をガス台で炊くというまあそれなりに面倒な事をしています。最近では小さな鋳鉄のダッチオーブンを使っているのでなおさら面倒です。基本的にはお米を水に三十分ぐらいは浸しておかないとダメなのですがこればかりはどうしようもない、と諦めていました。ところがもし超音波で吸水時間を短くできたならこれは時間の短縮になる、と思ったのです。

そこで先日の昆布〆もある事だしその晩はご飯を炊いて昆布〆を食べてみよう、と思ったので実験室の超音波洗浄機を借りて来る(勝手に持って来ただけという話もある)事にしました。実はこの超音波洗浄機、元々は働き始めた頃に医学部だったかの実験室が(その実験室の持ち主が引退するのに伴って)閉鎖された時の放出品を拾ってきたものでその時に大学の備品リストから外されたもの。僕が拾って来て実験室でたまに使っているのでまあある意味「僕の物」なのです。従って数日間、実験室から無くなってもだれも文句は言いません(そもそも僕以外は誰も使わないのです)。

Sonicator1
Sonicator2

また、色々と調べてみるとやはりご飯をおいしく炊くには硬水よりも軟水の方がおいしく炊ける様です。まあミネラルが多いとなかなか水がお米に浸透しない、というのは理解もできます。残念ながらオマハの水はかなり硬い水なのであまり向いていないと言えば向いていません。そこでこれまた実験室の純水(脱イオン水)を少しもらって来る事に。実験室の水は建物に備え付けの逆浸透圧装置から作られた逆浸透圧水から更に不純物を除く装置を通して作られる純水(厳密には純水ではなく「ほぼ純水」ですけど)。まあ基本的にはこれより純度の高い水はなかなか手に入りません。そう言う意味ではこれ以上の軟水は普通は存在しません。今回はお米を炊く時に使う程度でいいのでペットボトル一本分だけもらってきました(これも勝手に持って来ただけとも言う)。

Pet_bottle

さて、これで必要な物は全てそろったのですがところが一体どのぐらいの時間、超音波吸水させればいいのかさっぱり見当がつきません。何しろどこにもそういうデータが書かれていないのです。ただ、いつも放置して吸水している時は目安として三十分放置してあるので試しに五分間の超音波吸水をしてみる事にしました。

まずはお米を計ってそれと同量の水を別の容器に入れてその容器を超音波洗浄機に入れます。それから超音波洗浄機にお米と同じ高さぐらいまで水を注いで電源を入れて五分間放置。

Sonicator3
Sonicator4
Sonicator5
Sonicator6

その後で今度は超音波吸水したお米を鍋に入れて炊飯開始。

Dutchoven1
そこから先はまあ普段と同じ様に炊飯です。待つ事しばらく、蒸らす前に一度ご飯をしゃもじでひっくり返す事にしているので蓋を取ったら何となくいつもとご飯の感じが違います…。いつもより白いし何となくつやもある様な感じ…。感心しながらもしゃもじを入れたらいつもとしゃもじの感じも何だか違います。え?と思いつつも一度ひっくり返してからまた蓋をして待つ事約五分間。

その間におかずの用意などをしてからご飯を茶碗に盛っていよいよ食べる事に。

Dutchoven2
Dinner
まずはご飯から。一口、口に入れてみたらビックリするぐらいおいしい!いつもよりもふっくらとしていて少し柔らか目。え?これ本当にいつもと同じお米をいつもと同じ火加減で炊いたの?これは水の違いかそれとも超音波吸水の違いか?でもいつもは三十分以上水に浸けておくのに対して今日は(超音波吸水とは言え)たったの五分…。やはり超音波吸水の違いが大きいのか?と考えながらいつもになくおいしいご飯を食べました。

さて、この時は実験室の脱イオン水を使ったので普段と条件が二つ違う事になります。したがってこれだけで果たして本当に超音波吸水のおかげでご飯がおいしくなった、と確実に言いきる事はできません。そこで当然の様に追加実験をしてみる事になります。まずは水道水を使って超音波吸水をしてご飯を炊いてみました。結果は純水を使った程おいしくはありませんがやはりおいしい。普段ならば最低で三十分は吸水をさせる所が五分でできてしまう事も利点なのでこれはこれでまあアリかな、と思われます。また念のために純水で超音波を使わずにお米を炊いてみました。確かに純水を使った方が水道水を使うよりはご飯が柔らかいのですがやはり純水と超音波を使った方がおいしいご飯が炊ける様です。もう少し色々と実験をしてみる価値はあるな、とは思ってはいます。まあしばらくは職場で超音波洗浄機を使う必要性はないと思われるのでしばらくは借りっ放しにしておいてもいいか、とは思っています。

他にもおそらく加熱の仕方に工夫ができるのだろうな、とは思われますがその研究はまた別の機会に持ち越しになりそうです。これ以上、条件を変えると何がどう作用しているのかわからなくなりそうですから…。

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コメント

こんにちは。
昔の話ですが、国際ホテルの総料理長さんに教えてもらった事があるのですが、明日炊くコメは前日の夜に米をといで冷蔵庫で保管して朝炊くと美味しいそうです。一度も試したことないのですが^^;
コメに水を染み込ませる事が大事なんですね。

超音波で吸水をさせる事を調べている時にいくつかのウェブページで前日の夜から冷蔵庫で吸水させる、という事が紹介されているのを僕も読みました。理屈としてはまず、吸水をちゃんとしようと思うと時間がかかる。冷たい水よりも温かい水の方が吸水は早いけどゆっくりと吸水させたほうがふっくらとする、などの理由もあるらしいです。
さすがに水分がどのぐらいお米にあるかは簡単に分析できないのでよくはわかりませんがこれまではいかにろくに吸水していないお米を食べていたのか、と反省している今日この頃です。
実は他にも東芝の真空炊飯器での吸水も検証してみる予定ではいますがこちらの方は技術的な問題などでしばらく先延ばしになりそうです(実は東芝の炊飯器の真空で吸水は僕はかなり嘘くさいと思っていますけど…)。

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