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2014年4月 9日 (水)

フィールド・ディ(2014年)

三月の春休みからこっちずっと忙しい毎日を過ごしていました。前に二度程、フィールド・ディの事を書いています。二年に一度、うちの大学に周辺の学校の高校生たちがやって来てまあいわば化学オリンピックのような事をするイベントです。なぜ二年に一度か?うちの大学で開催されない年はUNO(ネブラスカ州大オマハ校)の方で行われるからです。実は昔はこれを毎年、うちの大学でやっていたのですが十年程前にうちの学部のある建物が建て増し、及び改装になったのでその年にUNOの化学部に話を持ちかけてその年はUNOで開催。それ以来、持ち回りになっているのです。僕は「年寄り」の年齢ではありませんが長い間、うちの大学にいるので歴史的な話になると詳しいのでそういう事が以前はあった事を知っていますが今では学部の半分以上がそういう事も知らなくなっていると思われます。あと数年もしたら本当に僕ぐらいになってしまうのではないか?という気がします…。

フィールド・ディに関してはうちの大学でやる限りは近年では参加する学校の監督の先生の登録、及びチームの登録を完全にウェブで自動化してあるのですが全て僕が書いたウェブアプリケーションなのでまずはそれがちゃんと機能しているのかの確認に追われる事になります(実はこちらは一月頃から水面下で進行していました)。時間があったらちょっと書き換えたかったのですがそこまでの時間がなかったのでそれはさすがに諦めました。それでも素人のコードなのであまり大した事はなく、パスワードのリセットとか暗号化をしなくてもいい様に工夫はしてあります。また、僕はとにかく自動化できるものは自動化して人力で書き直す、という事を極力避ける様にコードを書くのでウェブページもその様に書かれています。従って登録のページも締め切り日を過ぎたら自動的に登録画面が切り替わる様にしてあったりもします(最初にページを書く時に少し手を加えておけば後から楽になるのですがこれがなかなか普通の人には理解できない様で、うちの学部の今のウェブページの管理人はその辺りをよく分かっていない様です…)。

そのフィールド・ディに引っ付いて化学のデモショーも行われるので忙しさは倍増。とにかく忙しい日々が続きました。今回は新しい題目を加えたのでその関連の仕事も多くなりました。事の発端は二月に四年生の学生が二人やってきて「アナと雪の女王」の主題歌のLet It Goをデモショーでやりたいと言って来た事。音楽が決まっていてもでは実際に何をするのか?と聞いたら「酢酸ナトリウムの超飽和溶液はどうか?」と言って来たのです。

通常、溶液は溶媒の中に溶質は一定量までしか溶けません。従って、例えば食塩水ではある程度まで塩を水に溶かすと飽和状態になってそれ以上はどんなに頑張っても(同じ温度では)溶ける事はありません。ところが世の中には面白い事に条件がそろったら溶質が飽和状態を越えても溶媒に溶けて安定した状態の溶液が存在します。一番有名なのはおそらくこの酢酸ナトリウムの超飽和溶液かと思われます。当然、飽和状態よりも多く酢酸ナトリウムが水に溶け込んでいるので何かの拍子にあっという間に結晶が育つのです。

これは知らずに見ているとまるでみるみるうちに水が凍っていくかの様に見えます。これを「アナと雪の女王」のエルザが物を凍らせているかの様にしてはどうか?と言ってきたのです。

この酢酸ナトリウムの溶液、一番単純な方法は単純に酢酸ナトリウムを加熱しながら少量の水に溶かすのですが実はこれはそれほど簡単な事ではありません。160グラムの酢酸ナトリウムがだいたい30グラムの水に溶けて数百ミリリットルぐらいになるのですがこれを何リットル単位で作るとなると加熱する水の量も多くなりしかもだんだんと溶けにくくなる。更に酢酸ナトリウムは決して高い薬品ではありませんが一番お金がかかります。

ある意味、楽なのは酢酸を加熱しながら水酸化ナトリウムをひたすら加えていく、という手もあります。ところがこれはだんだんと水酸化ナトリウムが溶けなくなって来て時間がものすごくかかります。薬品の値段は酢酸も水酸化ナトリウムも安いのでいいのですが…。更に酸(酢酸)にアルカリ(水酸化ナトリウム)を溶かしているので熱が発生するのでゆっくり加えないとかなり危険です。水酸化ナトリウムはまた表面は普通、炭酸ナトリウムで覆われているのでその関係でなんとなく溶液が若干濁って見える事もあります。

実は若い頃、この酢酸ナトリウムの溶液を大量生産しなければならない事がありました。当時、まだ駆け出しだった頃にBM先生が高校の化学の先生用にワークショップを開いていて、その時に参加した高校の先生用に無料配布する目的で酢酸ナトリウムを大量に作った事があるのです。その時には酢酸と水酸化ナトリウムから作っていたのですがこれにものすごい時間がかかります。その時、ある日、ふと思ったのが水酸化ナトリウムの固体から作らず、水酸化ナトリウムの飽和溶液(そういう物が売っているのです)を使ってみたらどうか?という事。試しにやってみたらほぼ、酢酸、水酸化ナトリウム溶液、水を同量ずつ混ぜればちょうどいいぐらいになる、という事。そうやって作るのが一番時間もかからず、まあ安く作れる事が判明。それ以来、酢酸ナトリウムの溶液はだいたい僕はそうやって作る様にしています。

ではどのぐらい必要なのか?酢酸ナトリウムの溶液は放っておいたら自然に結晶化してしまう事があるので予備を含めて必要な量の二倍から三倍程度持っていた方がいいだろう、と判断をしました。最小でだいたい4リットル程度必要なのでその二、三倍となると8-12リットル程度必要。結局、10リットル程度作る事になりました。それでもちゃんと結晶化するかどうかを確認しなければならないので一度作っても常温に戻るまで待つ事になります。またその時に氷などで冷やしては超飽和状態にならないので自然に冷却するのを待つ事になるので時間がかかります。更には練習などで使ったらその時もやはり一度加熱して溶かしてから、となりまたまた時間がかかる事になります…。

そういう中、先週の日曜日、三月三十日にリハーサルを行いました。今回はフィールド・ディでの開催なので諸般の事情でショー自体も若干短くするという事で三十分程度と短いものとなりました。それでも運営側の僕の仕事はそれ程少なくはなくて結局、リハーサル当日はずいぶん早くに到着して準備を整える事に。その時のビデオはこちらで見る事ができます。僕が特に今回、関わったLet It Goはこちらです。

ところがこのビデオをよく見ればわかるのですが酢酸ナトリウムの超飽和溶液ってやはり不安定なので放っておいても何かの拍子に勝手に結晶化してしまうのですね…。OHPの上に乗った物は最初のOHPはすでに結晶化していました…。この酢酸ナトリウムの超飽和溶液ってやっぱり扱いが難しいのが最大の難点の一つです。

さて、実際のフィールド・ディは今年はなぜか参加チームの数が少なく、たった九校から25チーム。以前は十何校から四十近いチームが参加していた事を考えると今年はいったい何があったの?と思うぐらい参加が少ない年でした。もっとも、各チームのスケジュールを組む僕としては参加数が少ないのが楽と言えば楽でしたけど…。

実はこの各チームのスケジュールは単純ではなく結構、たいへんなのです。まず、各チームはプライマリーとアドバンスの二つのカテゴリーに分けられます。プライマリー・チームは初級化学の高校生のみ。アドバンス・チームは上級化学の高校生を最低一人含む、と規定されていてチームの登録時に申請する事になっています。で、プライマリー・チームとアドバンス・チームは別々のスケジュールを組む様になっています。また、情報の漏洩を極力避けるため、などの理由から各チームのスケジュールはバラバラで同じスケジュールのチームは二つとなくて休みイベント時間がなく、全部で六つのイベントを競う事になっています。実は二年前にうちの大学で行われた時も僕がスケジュールを組んだのですがその事を当日の三日前まで全く覚えていなくて水曜日の夜になってようやく思い出しました。

幸い、二年前のファイルが残っていたのでそのファイルを見て何をしたのかを解読します。しかしなぜか二年前のファイルの中にはC言語で書いたプログラムもあります…。なんでプログラムを書いたのだろう…?幸い、ソースコードがあったのでそれを見ながらいったい何をしたのかを見る事になります(ちなみにこのプログラムはすべての組み合わせを割り出す為に書いた物と後に判明しました)。毎年参加するチームの数が違うのでその為に若干の修正もしなければなりません。結局、スケジュールを組むのが終了したのは木曜日の夜。でも誰かに一応、確認してもらいたかったので金曜日にバイトの学生が来るまで保留。確認をしてもらってからようやくスケジュールをプリントする事に。やれやれ。急いでやった仕事、という事もありまたスケジュールの欠陥は運営上で重大欠陥なので大丈夫かな?とかなり心配しましたが実際に当日になって各イベントどれも特に問題もなくスムーズに進行して行ったようです。

そのうちにだんだんと化学のショーの準備に追われて忙しくなってきて結局、十時半頃から先はずっとショーの準備に追われて、となってしまいました。やはり高校生相手だとなかなかたいへんです。ショーはやはり観客の反応がいい方が成功するのですが高校生相手だとなかなか反応してくれなかったりとたいへんでした。また、人数も講堂が満杯になるほどの人数ではありませんでしたし…。外部からの観客を動員する、という手もあるのですがどれだけ人が来るのかわからないとそれもできず、結局、ほとんど外部から来た人はいなかった様です。

その化学のショーの本番の動画はこちら。で、その注目のLet It Goはなぜか開始までにエラい時間がかかります。何をしているの?と思っていたら僕のiPhoneに同僚からメッセージが届いて「ちょっと時間がかかる」との事。どうしてだろう?と思いつつもようやく始まります。結局、技術的な問題がいくつかあったりして観客の反応も今ひとつ…。液体窒素で凍らせて固くなっているはずのラケットボールも割れず、今ひとつでした。

実は、後になって知ったのですがOHPの上に仕掛けてあるガラスのパイ入れの中の酢酸ナトリウム、予備も含めて五つあるのですがそのうちの三つが舞台に出る前に結晶化してしまってつかえなくて舞台裏では大わらわになってしまっていたそうです。そうこうしているうちに液体窒素で凍らせたボールも少し融けて柔らかくなってしまったので割れなかったのではないか?との事。

それでも無事にショーは終了。それから表彰式を経て片付け。学生たちに後片付けが全部終わるまで逃げない様に先に釘をさしておいたのでまあ楽に終了しました(そうしないと数人だけで後片付けをするとエラい時間がかかるのです)。その日はそのままさっさと帰宅してまずはシャワーを浴びて少し仮眠を取る事に。とにかく疲れてしまいました。

週明けの昨日と今日(月曜日と火曜日)はもう少し残った後片付け。ショーの直前になってからパイ入れの中の酢酸ナトリウムの対処にはもしかしたら油を使えばいいのでは?と思えて来たので今週はその実験もしています。おそらく、空気中の埃に反応して結晶化しているのだと思われるので(帯電している埃などが問題なのだと思われます)蓋をしておけば大丈夫、とわかっているのですが蓋の代わりに油の層ではどうか?と土曜日に考えついたのです。要するに油層が蓋になるわけですね。実際にやってみた所現在の所の経過は良好。酢酸ナトリウムの結晶を押し込めばちゃんと結晶化しますし、そのままで放置しておいても大丈夫な様です。場合によっては何度でも使えるか?と思ってそういう実験もしてみましたがそちらの方は三、四度程でだんだんと油と混ざって来たり容器の端っこに結晶が溜まってきたりしてだんだんと使えなくなって来る、という制約はある様ですがその日のうちに使う程度ならば問題はない様で使えるかもしれない、と思っています。こちらの方はもう少し地道な研究が必要な様です。

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