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2015年2月25日 (水)

彼女とネコと僕

基本的にはこの内容の事は書かないつもりだと書きましたがちょっと事情が変わったのでまた僕の恋愛の話です。事の発端は四度目のデートの日の朝。昼から彼女と植物園で待ち合わせだったので少し時間があるなあ、と家でぼんやりしていたら突然、彼女からSMSで「ごめんなさい。今日は行けない」との事。彼女の飼っていたネコの具合が悪くなりそのまま安楽死させてあげるしかなくなってしまった、との事。僕はペットを飼った事がないのでよくはわかりませんがペットを家族と想定すればそれがどういう事なのか容易に理解できます。

彼女は僕と植物園に行く事を楽しみにしていた、とも書いていました。それはそれでうれしかったのですがでも彼女が大丈夫なのか?の方がまず心配。これでも一応、ボーイフレンドのつもりなので彼女の事を心配するのはある意味僕の仕事。とりあえず彼女の両親(オマハから約四時間の小さな街に住んでいます)が彼女の所まで来る、とは彼女が教えてくれたので僕が彼女の元に行ったら話がこじれるだけなので彼女の所に行くのは止めておきました。

突然、時間が空いたのでまずはちょっとだけ職場に仕事に行く事に。少しだけ月曜日の前に済ませておきたかった仕事があったからです。それから彼女に何ができるか?を少し考える事に。そうやって考えて出た結論が彼女のために料理をする事。母が亡くなった時、僕は全く食欲もなく、まして料理をする気にもならない状態がしばらく続きました。多分、そういう状態だった時に誰かから食べ物を貰えたらすごくよかっただろう、と考えたからです。ましてそれがボーイフレンドが作ってくれたものだったらもっといいのではないか?と考えたのです。とは言っても彼女が一人でいたい時には一人でいさせてあげたい。だから彼女の所で料理をするのではなく僕の家で料理をしてタッパーに入れて彼女に渡せばいい、と判断をしました。

何を作るか?なのですが最悪の場合には冷凍保存ができる物がいい。更に相手はアメリカ人なのでできればアメリカのいわゆるcomfort food、まあ日本語にすれば「おふくろの味」にあたる物です。経験上、落ち込んでいる時には炭水化物が多い物が元気になりやすいので当然、その手の物のレシピを探します。その結果、選んだレシピがこの三品。

ベークポテト・スープ
豆のスープ
マカロニとチーズのオーブン焼き

しかしそのうちの一品(二つ目の豆のスープ)はまず豆を六時間水に浸さねばならないので時間の関係から却下。しかたがないので三品目には僕の特製のスパゲッティー・カルボナーラを作る事に。

結局、本来はデートに行くはずだった日曜日の午後はずっと彼女のために料理をする事に。と言ってもうちのキッチンはそれ程大きくもないし鍋やフライパンの数に限りがあるので順番に作る事に。カルボナーラは自分の夕食と兼用にしたかったので夕方に食事の時間に作る事にしてまずは時間のかかるポテト・スープからです。

Potato_soup

次に取りかかったのがマカロニとチーズ。実はマカロニとチーズはアメリカのcomfort foodの定番中の定番。スーパーに行けばマカロニとチーズの素が箱入りになって売っているのですが彼女にせっかく作るのですからパスタとチーズ以外は手作り。その方が美味しいに決まっていますし、僕が彼女の事を思って作ったんだよ、という意思表示にもなります。

Macaroni

それから少し休憩を取って僕自身の夕食にもなったカルボナーラ。これはいわゆるローマ風のクリームの入っていないタイプの物で使うのはベーコンではなくて豚のほほ肉の燻製とプロシュットの細切れ(探せば売っているのです)を使っています。本番のローマではグアンチャーレなのですがこれはさすがに手に入らないので一番近い燻製したものにプロシュットを加える事でグアンチャーレに近い味と食感を出せる様にした工夫です。このカルボナーラに関してはこれは普段からいつも使っているレシピでその昔、母から貰ったパスタの料理本にあったレシピを改良した物です。

Carbonara

料理だけでもいいかな、とは思いましたが落ち込んでいる時には甘いものがあったらもっといい、と思って箱詰めのチョコレートも準備。さらにお花をあげる事に。一応、ペットが亡くなったという事であまり派手なお花ではなくて、と調べてみたらこちらでは葬式などの時には白い花が多いようなので白いバラの花束を購入。

Package

翌朝、それらを持って職場へ行きます。食べ物は職場の冷蔵庫に入れて対処ですが問題はお花。さすがに花束が僕のオフィスにあると怪しまれます。当然、どこかに隠しておく必要があるのですがどこに隠せばいいのか?という問題が生じます。結局、さんざん考えたあげく五階にある気象学の部屋(なぜか僕が鍵を持っている)に隠す事に。その部屋に入る人は誰もいないはずだからです(気象学部は大学の事情によって本年度から解散されたのですが気象学部が元々あった辺りはまだ空き部屋状態なのです)。

さてその日の十時頃、やはり気になったので彼女のオフィスに行ってみたら来ていたのでちょっと立ち寄る事に。どう見ても昨日は泣いていたそんな顔。元気もやはりない様でした。「大丈夫?」と聞くとそれでも精一杯の元気を出して「うん」と返事が。かわいそう、と思いながらも彼女に「帰る前に教えて。食べ物を持ってきたから」と言ってどうして僕が料理をしたかの説明を簡単にしました。彼女の方は「授業が終わったらすぐ帰るつもりだからその段階で連絡するね」との事。彼女を見て思ったのはどう見ても取り乱していた感じだし、まるで母が亡くなった直後の僕自身を見ているようだ、という事。

その後、午後になって彼女の授業が終わるちょっと前に彼女に渡すものの準備をして五階の気象学の部屋でしばらく待機。彼女から連絡が来るのを待ちます。彼女からSMSが届いたのは三時半過ぎ。まあ予測していた時間です。「わかった。今行くから」と返信をして彼女のオフィスへ向かいます。基本的には五食分の食事(カルボナーラ一食分、ポテト・スープ二食分、マカロニ二食分)を持ってきたので多分、彼女が思っていたよりも量が多かったのだろうと思います。お花もあったのでビックリしていました。

彼女はその段階で立ち上がって僕にハグ。きつく抱きしめてあげました。そして彼女に「これでも僕は君にボーイフレンドって呼んでもらいたいんだから君の事は大切なんだからね。それを忘れないでいて。一人が寂しかったら電話して。それでも収まらなかったら教えて。いつでもすぐに会いに来るから。君の事を僕は心配してるんだからね」と耳元にささやいておきました。彼女の方は「ずっと彼氏がいなかったから考えもしなかった…。覚えておくわ」との事。

結局、彼女とはそのまま話を少ししながらそれから二度、彼女のオフィスでハグをする事に。本当はキスもしたかったのだけど彼女の方で心の準備ができていなかっただろうし職場だしさらに人の目もあった(ドアを閉めてなかったのです)のでとりあえずは我慢。それでも実は彼女とハグしているのを誰かに見られたら…、とちょっと心配しましたが誰も見ていないはず。僕と彼女が近い位置で立っていたのを見たのがせいぜい三人ぐらい。もっとも、僕は彼女の周りにはバレてもいいや、とこの頃、思いはじめているので…(僕は彼女の同僚は全員、よく知っていますが彼女は僕の同僚をあまりよくは知りません。その上、彼女の方が僕よりもシャイなので公表するならば彼女の周りから始めた方がいいだろうな、と僕は思っています)。

彼女は僕と彼女のネコにぜひ知り合って欲しかったらしいのですがそれもかなう事はなりませんでした。人づてに彼女のネコの具合が昨年の秋頃からよくないのは知っていましたがここに来て呼吸困難でどうしようもない状態。結局、このまま苦しませるか安楽死させるかの選択しかない状態になってしまったそうです。たまたま手元にある写真が彼女のiPhoneには一枚しかないらしかったのですが僕に見せてくれました…。

「いつも帰ってきたらすぐに迎えに来てくれていたのだけどこれからはそれもないのね…。今朝までは両親がいてくれたけど今日からはまた一人だから…」とちょっと本人も心配をしていました。彼女の今の状態だと一人になるとどうしても悲しんでしまう、という事になりやすいはず。だから僕が今度は彼女が大丈夫かな、と心配してしまいます。だからこそ僕が「話をしたかったら電話して」と言う事になるのです。

母が亡くなった時に僕がどう感じていたか、を簡単に説明して昼間は人がいる所にいて何かをしていた方が気がまぎれてよかった事、一人になる時間も必要だったけど一人になったら鬱になりやすくなった事、食欲がなくても食べた方がいい事、楽しかった時の事を忘れない様にする事などを言うとまさにその通りだとの事。まあペットも家族ですから理屈は同じはずですからね。

彼女の方は僕との日曜日のデートがお流れになった事が残念なのとともにその事を申し訳なく思っていたらしいです。どうやら僕とデートに行くのをすごく楽しみにしていたらしいです。まあ残念なのは僕もそうですがそれでも彼女に取っては一大事なので全然、僕の方では問題もないのですが…。一応、彼女の方では「今週末に行こう」と言ってくれましたが僕のスケジュールが土曜日は悪いのですね、実は。さらに今週末は天気があんまりよくなくて雪が降るとか降らないとかいう予報が出ていますしどうなる事やら…。その先の週末は出張で僕がCERNに行くから週末がない様な物だし…。

あまり引き止めてもいけないのでそれからもう一度ハグをして別れる事に。彼女の事はそれからも大丈夫かな?と少し心配していたのですが夜になって彼女からSMSが届きました。ちょうど僕の作ったマカロニを食べておいしかった、との事。僕の所にSMSを送ってくれてちょっと安心しました。また、僕があげたお花も部屋に飾ってある、との事。それから少し彼女とやり取りをしました。まあ元気の様で少し安心しました。

実はこれは彼女も(まだ)知らない事なのですが先週の今頃、僕は理由もなく夜になると彼女の事を考えて不安になって鬱になっていたのでこうやって彼女とちゃんとやり取りができてうれしいのです。本当の事を言えばお流れになった日曜日のデートで彼女が嫌でなければ週の半ばに五分間でもいいから会いたい、と無理を言うつもりでいたのですがこういう事態になったのでまだそれを言っていませんし多分、しばらくは彼女にそれを言う事もないと思います。今は彼女に元気になって欲しいので僕からは特に何も言わない事にしました。

明けた今日(火曜日)、彼女と少し話をしたら「今日はずいぶんとよくなった」との事。「昨日までは何かの拍子に泣いていたけど今日は大丈夫」と話していました。実際、昨日は明らかに泣いていた事がわかるほど目が腫れていたし顔もむくんでいましたが今日はまあ普通。それでもどことなく寂しそうではありましたが…。多分、僕も母が亡くなってから二日ほどしたらこういう状態だった、という感じでした。

彼女と話をした後で生物学の事務の人の所に少し顔を出すことに。実は昨日、彼女に食べ物を持って行って彼女と話をしていた時に事務の人がちょっと彼女に用事があってやって来て僕と彼女が話をしているのを見たからです。元々、懇意にさせて頂いている方なのでもし僕と彼女の事がバレてもまあしばらくは大丈夫か?と思える人なのですが僕達の事を疑っていては困るので少し偵察に行く事にしたのです。たまたま今回のネコの事と全く関係の無い事で彼女に関係のある事を事務の人に訊く要件があったのでそれとなくその質問をしたら彼女のネコの話になりました。その話をしていても全く僕と彼女の事が漏れてこないのでとりあえず僕達の事はバレてはいない様です。よかった。

さて今回の一件でわかった事がいくつかあります。まずは彼女は僕が思っていたよりも僕の事を好きらしいという事。これはちょっと予想外。また彼女は僕にもっと彼女の事を知ってほしい、そんな感じです。これは彼女が本当ならぜひ、彼女のネコと僕にそのうち会ってほしかった、という事からの推測です。僕の方でもどうやら彼女の事を思っていたよりも好きな様です。彼女の事が心配でならなくて何かをしてあげたい、というのはやはりその表れなのだろうな、と思います。おかしな話です、よく考えると。実は初デートに誘った時はまだ彼女の事が本当にどれだけ好きなのか僕もわかっていませんでした。それでも初デートに誘って彼女の事を知れば知る程もっと好きになっていって多分、今の僕は彼女の事が好きから愛しているに変わりつつある状態なのだろう、と思われます。まだ完全には彼女の事を愛しているのではないのは確実。だからこそ彼女に期待もするし彼女にかまってもらえなくて落ち込んだりする事もまだあるのですが彼女の事を想うからこそ支えてあげたい、とも思う様になって来ている様です。

僕としてはお流れになってしまった日曜日のデートでもう一歩彼女との関係を近づけたいな、と思っていたのですがそれがこういう事になってしまったのは確かに残念です。でもこういう時だからこそ彼女の助けになってあげたい。そう思うのです。なんだか変な話ですよね、中年のオッサンが青春しているわけですから…。

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