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2015年9月14日 (月)

実験室改装

このしばらくエラく忙しい日々が続き、ブログの更新も停止していました。この時期は秋学期が八月の終わりから始まる関係で学期の準備が八月の頭頃から、八月の終わりからは実際の授業が始まるのでなかなか時間がなくて忙しいのですが今年はちょっとそれが異常なぐらい忙しくなってしまいました。というのも実はこの夏の間に実験室の改装が行われたからです。

事の発端は十年以上前。その当時からあちこちの科学系の学部で場所の余裕が無くなってきていた事に遡ります。その結果として今の僕のオフィスがある建物がこれまであった建物に隣接して建てられたのですがそのプロジェクトの一環としてこれまであった実験室の一部が改装されました。ところが機器分析の実験室は予算の関係から改装がされませんでした。それがようやく改装される事になったのです。

その下準備が始まったのが十二月の半ば。うちの大学のこの手の工事ではいつもの事ですが具体的に何月何日から工事を開始していつまでに終了させる事、とはっきりさせておいても全くその通りには行きません。機器分析化学の実験室の改装なので実験室にある分析計をすべて運び出したのが五月の頭の話。結局、僕がほとんどすべてを十日程で運び出して終了。それから何と一ヶ月半も全く動きは無し。実際に工事がようやく始まったのは七月になってからの話。そうなってもなかなか作業が進みません。あげくの果てには元々は予定に入っていなかった部分まで改装対象になったので緊急にそこに設置してあった物をすべて運び出す事に。それもたった二日程の短い間に、です。それもそもそも十二月の段階で僕が「この部分は改装しないのですね」とはっきりと尋ねていたにもかかわらず、ですから…。やれやれ。

事態にようやくの収束が出てきたのが本来の終了日をかなり過ぎた八月二十一日の話。本来はその十日程前の八月十日が受け渡しの日。最悪でもその一週間後の十七日という話だったのですが…。しかもその二十一日の段階で全部の作業が終了しているわけではなく、「大体終了」した段階でまだ「後日に取り付けに来ます」という事がかなり残っている状態…。うちの大学での工事はいつでもこういう調子なのでそれほど驚くことではないといえばそうなのですがこうして受け渡しが遅れるという事はそれだけ分析計の設置も遅れるという事。分析計の設置が遅れるという事は秋学期の機器分析の実験の授業にも差支えが出る、という事。

それでは学生に申し訳がないので何とか無理にでも間に合わせる為に僕が週末返上で働く事になります。その結果、ほぼ一月、全く休み無しで働く事になりました…。元々、週末二日とも休むという事は滅多にないのですが週末二日とも何時間も何週間も働くというのは珍しい事。しかも自主的に働くのではなく働かないとにっちもさっちもいかない事が目に見えているので基本的には働かざるをえない状態だったのです。もちろん、建前としては同僚たちも「手伝う」事になっているのですが実際には口では言うだけ。もちろん、こちらもそれを最初から分かっているので期待はしていません。人を悠長に待っているぐらいなら自分でやってしまう方が早いので自分でやる事になります。

実験室の事実上の引き渡しが完了した二十一日の午後からまずはそれまで分析計を保管してあった隣の実験室から分析計を動かす事になります。ただ五月に分析計を運び出した時と話が今度は違って運び出してから今度は各々の分析計を設置しなおさなければなりません。物によっては単純に動かして電源を入れればそれで終了な物もあるのですが多くは動かしてから電源を入れられるまでに色々と手順が必要な物があり、中にはそれから二日程度待たなければならない物もあります。従って機器分析の実験室に戻って来る方が運び出す時よりも時間がかかってしまう事になります。また二十一日の段階ではまだ若干の工事が残っていたのでそれが終了するまでは動かす事ができない物もありました。こちらはそれを最初から考慮して十日には工事を終了させる様に依頼してあったのですが…。

大学の授業その物は二十六日から始まる事になっていましたが諸般の事情で実験の授業が始まるのは三十一日から。数日の余裕が出る計算になりましたが結局、すべての分析計を隣の実験室から運び出す事ができたのは三十日の話。それもその段階で一部の分析計は単純に動かしただけ。中には仮に設置して使い始めた物もあり実際には「何とかなる」程度でした。また二十六日の段階で設置をして電源を入れてみたらイカれてしまっていて使えない状態の分析計が二つ。一つは電源を入れた途端にメモリーエラーが出て使えません。どうやらメインボードがショートしてしまった様でした。しかたがないから新しいメインボードを購入して翌日の午後に交換をする事に。

Gc_error_2
もう一つは点火装置がイカれてしまってバーナーに点火ができません。かなり古い分析計なので部品の情報も無く、しかたがないからサポートに電話をかけて尋ねる事に。たまたま電話にでたサポートの方に事情を説明して「で、どちらのモデルでしょうか?」と訊かれて教えたら大笑いされました。あまりに古くて「近年、そのモデルの話を聞いた事がない」との事…。まあ購入したのが二十年程前の話ですから当たり前と言えば当たり前。古いモデルなので点火装置のグロープラグは既に在庫が無し。それでもグロープラグを含む点火装置そのものは未だに在庫にあるとの事で単なるソレノイドバルブとグロープラグが700ドル以上って暴利だなあ、と思いつつもそちらを購入する事に。これまた翌日に間に合う様に送って貰って翌日の午後には無事交換しました。まあ二十年でこれがほぼ唯一の部品だから安い物と言えば安い物ではありますが…。

それでも教え始める三十一日に若干間に合わない分析計も若干存在してその段階では「とりあえず使えるけど数値はあまり保証しない」という状態の物が数台。そのうちの一台は何とか時間を捻出して二日の午後に何とかしました。それから五日の日に朝七時から九時間かけて試料を全部分析してようやく終了。その前の週末に分析はしたけどデータを見ている時間がなかった試料もすべて合わせてデータを学生に公表したのは翌日の六日の話。実はその週末は三連休だったのですが連休は「一日余分に誰にも邪魔されずに働ける日」でしかありませんでした…。平日は人の出入りがあるのでどうしても作業効率が悪くなって仕事にならないのですね…。僕が忙しいのはちょっと考えればわかりそうなものなのですが…。

しかしまあ、五月の半ばから七月まで一月半以上、実験室が空で工事が行われなかった事を考えると人を馬鹿にした話です。五月、もしくは六月の段階で本来の予定通りに工事が行われていたら最後の最後までもつれ込む事もなかったはずで僕の週末が何週間も丸つぶれになる事もなかったはず。もっとも近代のアメリカでは工事ってだいたいどこでもそんな感じなのですが…。

実験室の改装と共に核磁気共鳴計(NMR、平たく言えば分子の形を見る事ができる装置です)が新しくなりました。元々あったNMRは今からかれこれ十九年程前に購入した物でその当時から僕が一部の管理をしていました。一番大切なのはほぼ毎週、液体窒素を注入して二ヶ月に一度程度、液体ヘリウムを注入する事。使われている電磁石が超電導電磁石なので液体ヘリウムを切らすわけにはいかなかったのです。この古いNMRはネブラスカ州大のシャドロン校が八月の頭に貰って行きました。当初は同じメーカーの新しいモデルを購入するのか?と思っていたら昨年の秋にAgilent TechnologyはNMR部門を閉鎖してしまったのでそれ以来、NMRを制作、販売しているのはドイツのBrukerと日本の日本電子の二社のみ。一月から二月にかけてBrukerと日本電子のセールスの人たちと話をして結局、ドイツのBrukerを購入する事に。僕は最初は日本企業、という事で日本電子でもいいかな?と思っていたのですが日本電子はセールスのパウンフレットにおかしな英語表現がある(どうも自動翻訳を使って誰も後で英文としておかしくないか校正しなかったらしい)事やウェブサイトのコンテンツが日本語の方が情報量が多いなどという問題がある事(もちろん、僕がいるのでうちの大学では問題にはならない程度の話なのですが)。更にはNMRのコンソールのハードウェアに使われているOSがよりにもよってWinodws 7であるという事から僕は敬遠する事に。またBrukerの方が値段は高くても性能がいいなどの事からNMR選出に関わったほぼ全員がBrukerの購入に一票を入れる事に。

そのNMRの部品が届き始めたのが八月二十五日頃。金曜日の二十八日にはすべての部品が到着。明けた月曜日の三十一日の午後にはBrukerのエンジニアが到着して設置を始めました。

Nmr1
Nmr2
Nmr3
Nmr4
Nmr5
Nmr6
Nmr7
Nmr8

二週間がかりで設置は終了。途中で全く問題がなく順調に進んで十日の午後には引き渡しが完了しました。前のNMRの時にも僕は実験室にいたので設置を見ているはずなのですが断片的にしか覚えていません。ちょうどその時、別の分析計の設置が行われていたので前半はそちらの方にかかりきりになっていたからだと思われます。十九年前に超電導磁石に電流を流す所とか見たのは同じ所にいたはずなのに全く覚えていません。

これまで使っていたモデルは300 MHzの解像度があったのですが新しいモデルは400 MHzのモデル。その差によって単純には分子のより細かい構造が見える様になります。違うメーカーの物なので当然の様にソフトウェアも違うのでこれまで使い慣れた物とは使い勝手も違います。しばらくはどうやって使うか、に迷う事になるかと思われます。このNMRも前のモデルと同じく二十年近く使われる事になるのだろうなあ、と思われます。そう考えるとこれが僕が使う最後の物になる可能性が高いなあ、という気もします…。そう考えると少し不思議。

ともあれ実験室の改装とそれに伴う狂想曲はようやく収束してきました。しかしこれだけ無理をして働いてもきっとこの実験室の改装の功績はきっと他の誰かにされてしまって事実上、僕が九割以上の仕事をした事なんて大学の上層部は誰も気がつかないのだろうなあ。週末を何週間も働いても関係ないのだろうなあ、きっと。

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